ダイヤモンドと言えば無色透明のイメージがありますが、実はいろいろなカラーがあり、最近はカラーダイヤモンドにも人気が集まっています。「カラーダイヤモンドは天然石なの?」「どうやって作られるの?」「どういった加工がされているの?」などという疑問について調べてみました。
カラーダイヤモンドには3種類あります。
・ファンシー(天然)カラーダイヤモンド
・トリートメントダイヤモンド
・コーティングダイヤモンド
ダイヤモンドは天然石の状態でカラーがあるものと、無色透明なダイヤモンドに着色をほどこしたものがあります。天然石そのものの状態でカラーがある「ファンシーカラーダイヤモンド」は、「ナチュラルカラーダイヤモンド」とも呼ばれています。
ファンシーカラーダイヤモンドについて
ファンシーカラーダイヤモンドのカラーは、ほぼ全色あります。大まかに分類すると、無色透明、ホワイト、イエロー、ピンク、ブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、レッド、パープル、グレー、ブラックがあります。GIA(米国宝石学協会)が鑑定するダイヤモンドのカラーは、イエロー、オレンジ、ピンク、レッド、オレンジ、パープル、バイオレット、ブルー、グリーンの8色です。
どうしてカラーのダイヤモンドができるの?
いまだ完全な科学的証明がされておらず、なぜカラーになるのかということはよくわかっていません。不明な部分が多いのですが、わかっていることは、「放射線照射による結晶構造の変化」または「ダイヤモンドの生成期間中に何らかの不純物が混ざり、それによって色が生じている」ということです。
窒素、ホウ素、水素などの不純物に加えて結晶構造の欠陥が可視光線のエネルギー範囲に相当する低い電子状態を作り出し、可視光線の吸収が起こります。 その結果としてダイヤモンドに色がついて見えるのです。なぜカラーになるかよくわからない、というミステリアスなところも、ダイヤモンドの魅力のひとつかもしれませんね。
色によって違う要因
・ピンクダイヤモンド
ダイヤモンドの結晶格子中に、窒素原子が取り込まれ、窒素原子に隣接する炭素原子が欠けるとピンクダイヤモンドになります。
・ブルーダイヤモンド
ダイヤモンドの結晶格子中に、炭素原子1億個中に5個以下の割合でホウ素原子が取り込まれるとブルーダイヤモンドになります。
・イエローダイヤモンド
取り込んだ窒素原子の含有量が、炭素原子100万個に対し10~5500個(10ppm~5500ppm)含まれることでイエローダイヤモンドになります。
・グリーンダイヤモンド
ダイヤモンドの結晶格子中に窒素原子が取り込まれ、取り込んだ二つの窒素原子にはさまれた炭素原子が欠けると、グリーンダイヤモンドになります。
・ブラックダイヤモンド
ブラックダイヤモンドの色は、ほかのダイヤモンドと異なり微量元素による効果ではありません。ダイヤモンドの中のグラファイトや、インクルージョン(内包物)が反映して黒いとなって表れたものです。
ファンシーカラーダイヤモンドの産地
ピンクダイヤモンドの産地として有名なのは、オーストラリアのアーガイルです。そのほかの色のファンシーカラーダイヤモンドは、インド、ロシア、南アフリカ、ブラジル、タンザニア、ザイール、アンゴラなどです。
ファンシーカラーダイヤモンドの産出量
ファンシーカラーダイヤモンドの産出量はとても少なく、世界中で産出されるすべてのダイヤモンドのうちの0.001%です。1万個のダイヤモンドがあれば、そのうちファンシーカラーダイヤモンドがひとつあるかないか、または多くても10個以内という大変希少価値の高い物です。少ない中でも多いカラーはブラウン、イエローのダイヤモンドです。人気の高いピンクダイヤモンドなどは、どれだけ貴重なものなのでしょうか。
人工的に作られたカラーダイヤモンド
ここまで読んでいただいて、ファンシーカラーダイヤモンドがどれほど数少ないか、お分かりいただけたと思います。人工的に色を着けた「トリートメントダイヤモンド」「コーティングダイヤモンド」なども人気を集めています。これらは、石は天然のダイヤモンドを使って、着色するためにトリートメント、またはコーティングをしています。
コーティングダイヤモンドについて
コーティングダイヤモンドは表面にだけ着色処理を施しているため、使っているうちに表面のコーティング膜が剥げてきてしまったり、劣化すると色が落ちてしまうことがあります。鑑定や鑑別が不可能です。
エンハンスメントについて
天然のダイヤモンドに手を加えて色味を加工しているものは「トリートメント(処理)」と「エンハンスメント(強化)」にわかれます。トリートメントとエンハンスメントの差は「美容整形と化粧」ほどの差があり、エンハンスメントは日本では「天然」の部類に入りますが、国によっては加工をほどこしたダイヤモンドはすべてトリートメントダイヤモンドに分類されることもあります。エンハンスメントでカラーを濃くしてファンシーカラーを作り上げることや、逆に白くすることができます。エンハンスメントは、その宝石が持っている潜在的な美しさを引き出す「改良」と呼ばれる手段です。その方法には含浸処理、加熱処理などがあります。販売者側は、お客様にエンハンスト処理について説明しないことがほとんどです。それは、あまりに一般的で当たり前な処理であることと、お客様の不安をあおらないためでもあります。
トリートメントダイヤモンドについて
トリートメントダイヤモンドはコーティングダイヤモンドとは違って、石の内部に染色処理を施すので劣化の心配がなく、研磨を行っても色が落ちることはありません。無色透明のダイヤモンドとほぼ同じ金額で取引され、鑑定書には処理の事実が記載される場合と、されない場合があります。エンハンスメントと異なり、トリートメントダイヤモンドは、宝石自体が持っている性質や潜在因子などとまったく関係なく、化学的に処理し変化させる「改変」という手段を取っています。トリートメントダイヤモンドは、日本では「処理石」の扱いです。
どうやって色を着けるの?
トリートメントダイヤモンドは、放射線を照射することによって、正四面体結晶を構成する炭素原子間の結合の一部を切断し、人工的に格子欠陥を作ることによってナチュラルカラーダイヤモンドのようにカラーがつきます。これが最もよく用いられる方法です。放射線照射で着色したダイヤモンドに熱処理を施すことによって、別のカラーを発色させることもできます。
放射線の人体への影響は?色は変わらないの?
トリートメントダイヤモンドは、天然の無色透明のダイヤモンドを着色する際、原子炉で発生する中性子線が用いられます。中性子線を照射することで、ダイヤモンドの表面に付着した汚れなどが放射化して放射線を発生することがありますが、店頭で販売される頃には落ち着いているので、人体への影響はありません。トリートメントダイヤモンドの着色の効果は、半永久的に続きます。
ダイヤモンド以外の石のカラー処理
ダイヤモンド以外の色石もカラーの加工がされることが多く、エメラルドやルビー、サファイアなどをはじめ、処理されている色石が多いです。加熱処理、含浸処理、ベリリウム拡散加熱処理、ガラス充填処理、放射線処理などの方法があります。
人気のあるカラーダイヤモンド
とても希少価値の高いファンシーカラーダイヤモンドですが、その中でも数が少ないピンクダイヤモンドやブルーダイヤモンドが人気です。当然、石の大きさが大きければ大きいほど流通していないのですが、メレダイヤをファンシーカラーにしたマリッジリングなども人気です。身に着けるだけで、普段とは違った特別な装いとなることでしょう。