ダイヤモンドのクラリティについて
一見して同じように見えるダイヤモンドですが、この世に二つと同じ石は存在しません。天然のダイヤモンドは、インクルージョン(内包物)やブレミッシュ(外面のキズ)のまったくないものは、ほとんど存在しません。「フローレス」と呼ばれる極めて希少価値の高い、インクルージョンやブレミッシュの一切ないダイヤモンドを除いては、大抵のものにインクルージョンがあります。ダイヤモンドの評価を決める「4C」カラー、カット、クラリティ、カラットのうちのひとつ、「クラリティ」についてご紹介していきます。
クラリティとは?
「クラリティ」とは「透明度」のことをいいます。ダイヤモンドは地中深く、高熱と圧力で形成されます。そのため、ダイヤモンドには多くの内包物(インクルージョン)が含まれ、表面にはさまざまなキズ(ブレミッシュ)があります。ダイヤモンドにどれだけの、インクルージョンやブレミッシュが含まれるかを評価するのが「クラリティ」です。
インクルージョンとは?
インクルージョン(内包物)は内面的なもので、ほかの鉱物の結晶やフェザー(割れ)、ダイヤモンドが地中で形成される際の結晶構造内のゆがみの跡などのことを言います。
ブレミッシュとは?
ブレミッシュとは、ダイヤモンドの表面の欠けや擦り傷のことを指します。ブレミッシュは外面上のもので、ダイヤモンドを加工するときに残されたスクラッチや、小さなニックやチップ、または原石結晶の表面の一部のことを言います。
クラリティのグレードの決め方は?
クラリティは、インクルージョンやブレミッシュの位置や数によって等級付けがされます。インクルージョンやブレミッシュの数の少ないものほど、高い価値があります。クラリティ特徴がグレードに影響する点は、サイズ、数、位置、性質、色の5つです。クラリティは次のように、11段階に等級付けされます
- FL(flawless)
- IF(internally flawless)
- VVS1(very very slightly included1)
- VVS2(very very slightly included2)
- VS1(very slightly included1)
- VS2(very slightly included2)
- SI1(slightly included1)
- SI2(slightly included2)
- I1(included 1)
- I2(included 2)
- I3(included 3)
それぞれの等級について、高いものからご紹介していきます。
<FL(flawless)フローレス>
外部、内部ともに無欠点のダイヤモンドを指します。熟練のグレーダー(鑑定士)が10倍のルーペで検査しても、内部、外部にインクルージョンやブレミッシュを確認することのできない、最高評価のクラリティです。ダイヤモンド業者でも目にすることが稀な、一般にはほとんど流通しないとされる極めて希少価値の高いダイヤモンドです。
<IF(internally flawless)インターナリーフローレス>
内部無欠点のダイヤモンドを指します。熟練のグレーダーが10倍のルーペで検査しても、インクルージョンを確認することができません。外部に非常に微細なブレミッシュが確認できます。市場に流通するダイヤモンドの中では、最高品質です。
<VVS1(very very slightly included1)>
ベリー・ベリー・スライトリー・インクルーデッド1(ブイブイエスワンと呼びます)
ごくごくわずかなインクルージョンを含みます。熟練のグレーダーが、10倍に拡大してインクルージョンを確認しても、見つけることは極めて困難で、肉眼では見えることはありません。市場に流通するダイヤモンドの中でも非常に優れたグレードのダイヤモンドです。
<VVS2(very very slightly included2)>
ベリー・ベリー・スライトリー・インクルーデッド2(ブイブイエスツー)
ごくごくわずかなインクルージョンがあるという評価の中で、次点に位置付けます。熟練のグレーダーが10倍に拡大しても、インクルージョンを見つけることは困難で、肉眼では見えることはありません。市場に流通するダイヤモンドの中でも非常に優れたグレードのダイヤモンドです。
<VS1 (very slightly included1)>
ベリー・スライトリー・インクルーテッド1(ブイエスワン)
ごくわずかなインクルージョンが確認されます。熟練のグレーダーが10倍に拡大しても、インクルージョンを見つけることが難しく、肉眼では見えません。市場に流通するダイヤモンドの中でも優れたグレードのダイヤモンドです。
<VS2(very slightly included2)>
ベリー・スライトリー・インクルーテッド2(ブイエスツー)
ごくわずかな内包物が確認される評価の中で、次点に位置付けます。熟練のグレーダーが10倍に拡大しても、インクルージョンを見つけることが難しく、肉眼では見えません。市場に流通するダイヤモンドの中でも優れたグレードのダイヤモンドです。
<SI1 (slightly included1)>
スライトリー・インクルーテッド1(エスアイワン)
わずかなインクルージョンがあると評価されます。熟練のグレーダーが10倍に拡大して、インクルージョンを容易に確認できるレベルですが、肉眼では見ることができません。一般の人が10倍のルーペで見ても、インクルージョンを見つけることはできません。
<SI2(slightly included2)>
スライトリー・インクルーテッド2(エスアイツー)
わずかなインクルージョンがあると評価される中で、次点のレベルです。10倍に拡大するとインクルージョンを容易に確認することができます。0.5カラット以下のものは、インクルージョンを見つけることはできませんが、それ以上になると肉眼でも稀に見ることができるものもあります。
<I1(included 1)インクルーテッド1(アイワン)>
<I2(included 2)インクルーテッド2(アイツー)>
<I3(included 3)インクルーテッド3(アイスリー)>
インクルージョンやブレミッシュなどは、肉眼でも容易に確認することができます。そのため、透明度や輝きに影響することがあります。肉眼でキズが見える品質なので、鑑定書がつかない場合もあります。結婚指輪などに使われることはなく、安価なファッションリングなどに使用されることが多いクラスです。
クラリティにおける「I」について
SI1、I1などの「I」は、かつてはImperfect (インパーフェクト)と呼ばれていましたが、近年ではincluded(インクルーテッド)に置き換えられています。ダイヤモンド専門家はかつての慣行から「Imperfect」と呼ぶ場合もありますが、同じことです。まったく別のアルファベットを使うロシアなどの国でも、略語は同じように表記します。
クラリティ特徴を減らすようカットします
カッター(ダイヤモンドをカットする専門家)はダイヤモンドをカットする際に、なるべくクラリティの特徴を減らすようカットしています。残ったインクルージョンなどは、反射で見えにくい場所に置こうとします。カッティングよって新たな特徴が生まれる場合もあります。
ダイヤモンドを選ぶ際に、クラリティは?
ダイヤモンドのインクルージョンやブレミッシュは、言うなればダイヤモンドの指紋のようなもので、個性でもあるのです。たとえインクルージョンがあったとしても、輝きに影響を与えない程度のものであれば、ダイヤモンドの本来の美しさを損なうものではありません。ダイヤモンドの輝きを損なわないクラリティのものを選ぶなら、VS2クラス以上のものがおすすめです。VS2以上であれば、肉眼でインクルージョンを確認することはできませんし、ダイヤモンドの輝きに影響するものではありません。
各クラスのインクルージョンの見え方の差は微々たるものですが、価格には影響してきます。価値を決定するほかのすべての要因が同じ場合、クラリティのグレードが高くなると、カラット当たりのダイヤモンドの価格も高くなります。ダイヤモンドの品質のどこにこだわるかは人それぞれですが、見た目に大して変わらないクラリティのクラスは低めにして、カラーやカットをグレードの高いものにする、というのもひとつの方法です。