ダイヤモンドを知る

ダイヤモンド業界の頂点に君臨するデ・ビアス社

エンゲージリングにも選ばれ人気の高い宝石の王様といっても過言ではないダイヤモンド。ダイヤモンドはなぜこんなにも愛され、支持される宝石なのでしょうか?

希少性?確かにカラーダイヤモンドの中にはたいへん希少性の高いものもありますが、一般的なダイヤモンドの採掘量よりも少なく希少な宝石はほかにもあります。この謎を解くカギになるのが、デ・ビアス社の存在です。ダイヤモンドジュエリーを検討する際には、一度は耳にしたこともあるのではないでしょうか?
今回はダイヤモンドにまつわるデ・ビアス社についてお話ししたいと思います。

ダイヤモンドとデ・ビアス社の歴史

1800年代の後半~1900年代頃、ダイヤモンドの採掘に資本投下がされ、採掘技術の進歩が進んでダイヤモンドの採掘量が大幅に増加しました。たくさん手に入るようになった分、売り手が増え、ダイヤモンド採掘業者の経営に陰りが見え始めました。このままだと価値が下がってしまうだけでなく採掘業者、ダイヤモンドの業界全体が危機に瀕してしまう状態でした。

いち早くそれを懸念した男性が「アフリカのナポレオン」こと、イギリス人の政治家のセシル・ローズ(Cecil John Rhodes)でした。彼はまず、1881年に無法地帯となっていた鉱山一帯を買収し、デ・ビアス社を設立しました。その後、当時のライバルといわれたキンバリー鉱山と合併し、ウェッセルトン、ヤーガースフォンテインなどの鉱山も買収していき、19世紀の終わりにはダイヤモンド生産地の9割以上を独占する企業となりました。1902年にセシル・ローズが死去し、デビアス社が所有する鉱山とほぼ同じレベルの産出量を誇る鉱山が発見されると、9割以上の独占から4割にまで落ち込みました。

そんな時にユダヤ系ドイツ人、アーネスト・オッペンハイマー(Sir Ernest Oppenheimer)があらわれたのです。彼は南西アフリカの鉱山を入手すると、ダイヤモンド業界へ参入し、1926年にデ・ビアス社の役員になりました。デ・ビアスはここから再び、ダイヤモンド業界を支配する企業へと返り咲くのです。

デ・ビアス社の独占システム

デ・ビアス社はダイヤモンドを取引するために「サイト」というシステムを作りました。この中身は、世界のダイヤモンドをデ・ビアスが全て管理する、というものでした。現在では、ダイヤモンド・トレーディング・カンパニー(DTC)という名前で原石の販売を行っています。サイトホルダーと呼ばれるデ・ビアスから選ばれた限られた資格を持つ者だけが、ダイヤモンドの原石を手にすることが出来ます。ちなみに2016年時点、日本での唯一のサイトホルダーはTASAKI真珠です。

厳しいルールがあるサイトホルダー

年に10回開催されるサイトですが、ダイヤモンドの原石が欲しいからと言って、誰でもサイトホルダーになれるわけではありません。ジュエリー業界の過去の実績、財務諸表などから厳しく審査されて、通過したものだけがやっと参加資格を得られます。ですが、サイトに参加でき、販売会へ参加出来たとしても、デ・ビアスからの一方的なルールが待ち構えています。

・取引するダイヤモンド原石は、量も品質もデ・ビアス社が決定する。
・価格交渉は一切なし。
・原石はセットでの販売のみで一部交換は一切なし。
・次回のサイトへの参加資格者はデ・ビアスが決定する。

サイトホルダーは次回も参加したいのであれば、今回も購入せざるを負えない状態です。ちなみに上記ルールを違反したサイトホルダーは翌年から参加はできません。
デ・ビアスはこのような厳しいルールを作る事で、ダイヤモンド市場を独占し、市場への供給量をコントロールしました。そして、長年ダイヤモンドの価格低下を防いで来たのです。

ダイヤモンドの価値を守り続けるデ・ビアス社

デ・ビアス社はダイヤモンドの市場を独占することで、長年ダイヤモンドの価値を守ってきました。実をいうと冒頭でも少し触れたように、ダイヤモンドよりも採掘量の少ない宝石はほかにもたくさんあります。むしろ、ルビーやアレキサンドライトなどよりも、ダイヤモンドの採掘量は豊富なのです。

この採掘量を全て流せるだけ流してしまえば、流通量が一気に増えて、ダイヤモンドは今ほどの価値はなくなり価格も暴落してしまうでしょう。デ・ビアスが市場を独占し、ダイヤモンドの流通量を制限したからこそ、今のダイヤモンドの価値があるのです。

デ・ビアス社によって宝石の王様となったダイヤモンド

デ・ビアス社のダイヤモンドのプロモーションは独創的で緻密に練られたものばかりでした。皆さんも一度は「ダイヤモンドは永遠の輝き」、「婚約指輪は給料3か月分」なんて聞いたことがありませんか?これはデ・ビアス社のダイヤモンドのプロモーションの一つで有名なキャッチフレーズです。

またこのキャッチフレーズだけでなく

「スイートテンダイヤモンド」
「トリロジーダイヤモンド」

なども、デ・ビアス社が打ち出した素晴らしいプロモーションです。
婚約指輪や結婚指輪にダイヤモンドが施してあるものを選ぶのは、今では当たり前のようになっていますが、婚約するときにダイヤモンドリングを贈ること自体も、デ・ビアスが作り上げたダイヤモンドのイメージなのです。デ・ビアスはダイヤモンドの価値=希少性とするのではなく、ダイヤモンドに抱くイメージやあこがれで価値を維持しようと対策をしているのです。

現在のデ・ビアス社

世界のダイヤモンドの80%~90%を支配していたデ・ビアスですが、独占禁止法違反に問われ、またロシアやオーストラリアでもダイヤモンドが生産されるようになり、現在のデ・ビアスのシェアは5割程度になったといわれています。デ・ビアスが日本でCMを流し、有名なキャッチフレーズを広めていた頃の売り上げは4,000億円と言われています。現在では1,000億円弱まで下落し、TVCMもすっかり見なくなってしまいました。おそらく今の20代の人たちは「婚約指輪は給料3か月分」なんて聞いたこともないでしょう。

現在のデ・ビアスは直接販売に力を入れており、ダイヤモンドの新しい評価基準を提案しています。一般的にGIA基準と呼ばれるダイヤモンドの評価基準は4C(カット、カラー、クラリティー、カラット)です。それに加えて、デ・ビアスはFire、Life、Brillianceという3つの要素を提案しています。
デ・ビアスのサイトから引用し、中身を少し詳しく説明すると

「ファイヤー」は、幾多ものファセットに踊る光の屈折から生じる美しい虹色。

「ライフ」は、きらめき。手の上でダイヤモンドを動かすときに生じるシンチレーションや光のバースト。

「ブリリアンス」は、自然な透明感。根底に存在する透明感が、上からの光を捕え反射し、フェイスからまた輝きを返すことによって、見るものを惹きつけて離しません。

(DE BEERS http://www.debeers.co.jp/diamond-expertise/de-beers-diamonds/diamond-mastery「引用」)

GIAのカット基準と比べてもさほど目新しさはありませんが、デ・ビアス社オリジナルのカット基準というのが差別化を感じるかもしれません。今も昔もデ・ビアスはダイヤモンドの価値とともに素晴らしさを提案し続けているのです。

まとめ

ダイヤモンドとデ・ビアスは切っても切れない関係にあります。
現在シェアが5割にまで落ち込んだといえど、デ・ビアスがダイヤモンドを市場に流通させるとダイヤモンドの市場価格が変動するといわれるほどまだまだ影響力のある会社です。今日のダイヤモンドがこれほどまでに憧れと価値を見出せる宝石でいられるのはデ・ビアス社の力によるものといっても過言ではないのです。

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