ダイヤモンドはごく僅かの限られた場所でしか採掘されません。何故なら35億年から9億年前からある土地でしか採掘されないからです。特に最盛期は16億年ほどと言われますが、その中でも価値あるダイヤモンドが採掘されるのはごくごく僅かです。
その僅かなダイヤモンドの採掘国について今回はお話ししたいと思います。
採掘国のランキング
採掘国の中でもやはりたくさん産出する国があります。
1位 ロシア:3,490万カラット
2位 コンゴ民主共和国:2,150万カラット
3位 ボツワナ:2,060万カラット
4位 ジンバブウェ:1,210万カラット
5位 カナダ:1,050万カラット
6位 オーストラリア:918万カラット
7位 アンゴラ:833万カラット
8位 南アフリカ共和国:708万カラット
9位 ナミビア:162万カラット
10位 シエラレオネ:54万カラット
1位のロシアは、産出量のほとんどがシベリアのサハ共和国で採掘されています。サハ産のダイヤモンドは、透明度が高く高品質で有名です。ロシアの極東連邦管区の都市ミールヌイにあいるミール鉱山はダイヤモンド鉱山としては世界最大です。最盛期には1年に1000万カラットのダイヤモンドを産出していました。品質も宝石として扱える高品質なダイヤモンドが鉱石の20%も含有されています。これは当時ダイヤモンド流通会社として世界最大手だったデビアス社を焦らせたと言われています。ミール鉱山の産出量は、他の鉱山と比較すると考えられない量だったからです。
2位のコンゴ民主共和国は、自然資源に恵まれた国でダイヤモンドのみに関わらず、金やコバルトなどの埋蔵資源が豊富です。ですが、187カ国中186位の最貧国と言われています。ダイヤモンドなどの豊富な資源を巡って内戦を引き起こしているのです。
3位のボツワナですが、ダイヤモンドがGDPの約3割を占めるほどの最大産業となっています。イギリスから独立の直後は最貧国の1つとして数えられていましたが、2014年には1人当たりのGDPが初めて7,000ドルを超えました。
それほどにダイヤモンドが国に与える影響は強くダイヤモンドが採掘出来ると言っても必ずしも国が豊かであるとは限らないのです。その証拠として、ダイヤモンドの産出国ランキングと寿命の短い国のランキングはとても近いです。またダイヤモンドが密輸で流れていることも多く、殆どの人々はこのダイヤモンドを見たことすらないようです。ダイヤモンド資源が有効に国の開発に生かされれば、豊かな国になる筈ですが、ダイヤモンドから得られる富を手にする人はごく僅かであり、大部分の人々はダイヤを見たことすらありません。戦争のために吸い取られ、経済の投資に回されることはないのが現状なのです。
日本では採れないダイヤモンド
日本産のダイヤモンドと聞いたことはありますか?もしあるという方はそれはもしかしたら偽物かもしれません。何故なら日本では絶対に天然のダイヤモンドは採掘されないからです。ダイヤモンドが採掘されるのは35億年から9億年前からある土地のみです。日本は約6億年ほど前に出来た土地の上にありますので、ダイヤモンドが採掘されることはないのです。火山の多い国なのでなんとなく採掘されそうな印象ですが、残念ながらないようです。
採掘国の移り変わり
ダイヤモンドの採掘国は時代によって移り変わっています。長らくダイヤモンドはインドから採掘されていて、その頃はダイヤモンドをインド石と呼んでいたほどでした。しかし、採掘方法が川の石を集めるだけと言うバンニング方式(川の土や砂をすくい、大きなお皿に入れ川の水ですすいで原石を探す原始的な方法。)で、あっという間になくなってしまいました。違う採掘技術が確立した頃には、他の国でインドよりも大きな鉱脈が相次いで発見されていましたのでインドは主要産出国としては姿を消してしまいました。ですが、現在でも流通・研磨・販売においてインドは大きな地位を占めていることには変わりありません。
インドでの産出が減り始め、人々は次の採掘場所を求めていました。今まではインドにしかないはずのダイヤモンドがブラジルで発見され、18世紀の始めに発見されたブラジルダイヤモンド鉱脈は、それから約100年ダイヤモンドの主生産地として君臨し続けました。ブラジルのダイヤモンド産出量が減り始めた頃には世界最大級の南アフリカの鉱脈が発見されました。次々と有力な鉱山が発見され、この頃はまさにダイヤ・ラッシュを迎えました。
南アフリカは現在でも主要産出国の一つで、ブラジルも一時期ほど産出量ではないものの、生産し続けています。また、アフリカ大陸はもともと良質の鉱脈が存在したため、上位産出国はボツワナやアンゴラ、シエラレオネ、リベリア、タンザニアなどのアフリカが大半を占めているなかロシアが上位に食い込んで来ます。最近はカナダやカラーダイヤ(ファンシーダイヤモンド)を多く産出するオーストラリアなども注目され、たくさんの産出国が発見されました。
キンバーライトって何?
ダイヤモンドの産出国を話す多くの書物に必ずしも出てくるのがキンバーライトです。キンバーライトはダイヤモンドの運搬船とも言われ、火山岩の一種です。地下深くからマグマが次第に地表に突出してきたものが固まった岩石ですが、その時一緒にダイヤモンドの原石を運んで地表近くまで出て来ます。つまり、ダイヤモンド鉱脈というのは、キンバーライト鉱脈といても間違いではありません。
インドで最初に川で発見された時も近くのキンバーライトを川が削り取り、その土砂が川底に溜まったのを見つけたのがきっかけなのです。ちなみにキンバーライトとは南アフリカの都市、キンバリーからその名が取られています。
ロシア産ダイヤモンドは敬遠される?
ロシア産のダイヤモンドは世界規模でも1位を誇り、他の鉱山と比べると高品質なダイヤモンドの割合の高さからか、昔からある疑惑が持たれていました。それは「ロシア産のダイヤモンドは人工ダイヤモンドではないか?」と言う疑惑です。ロシア産のダイヤモンドはほとんど同じ形、同じ大きさのクリスタル系原石が大量に研磨され、インクルージョンの特徴までもが類似しています。しかし「合成には見られない特徴が認められる」と鑑定されました。ですが未だに「インクルージョンも含めて合成である」と主張する人もいます。本当に合成ダイヤモンドだとしたらロシアの技術力に驚かされるばかりですが、それほどに採掘量が他と比べて群を抜いているため湧いた噂話だとも言われています。
また、2012年9月にロシアはダイヤモンド鉱脈が東シベリアに存在すると公表をしました。既に1970年代には発見されていたと言う鉱脈は直径100km以上の「ポピガイ」と呼ばれる隕石クレーターにあります。埋蔵量は数億カラットにも及ぶとされ、世界のダイヤモンド需要の3000年分を満たす量だそうです。発表を控えていたのも、世界中のダイヤモンド産出国の利益が損なわれないようとのことでした。このポピガイ・ダイヤは、衝突ダイヤ(Impact Diamond)と呼ばれ、隕石が地球に落下した際、地中のグラファイト(黒鉛)と衝突して瞬間的に出来たものとされています。黒しかなくインクルージョンだらけなので工業用のダイヤモンドしてしか使い道もなく、宝石業界には影響がないとされましたが実は、衝突ダイヤと合成ダイヤは生成過程が似ています。隕石が衝突する一瞬で生成される衝突ダイヤは、長い時間をかけて生成される天然ダイヤとは違い、合成ダイヤに近い生成過程を持っています。
ロシアは新しい技術でつくった合成ダイヤを「衝突ダイヤ」と称して市場に流そうとして、この時期にポピガイ鉱脈の公表を行ったのではないかという疑惑が出てしまったのです。そのため、宝石業界ではロシア産のダイヤモンドは扱わないとする宝石商もあるのです。