鑑定書で記載されている4C(カラット、カラー、クラリティ、カット)の評価のひとつに、カラーの評価があります。カラーとは、ダイヤモンドの色の美しさを評価するものです。ダイヤモンドは無色に近いほど見た目にも美しく映ります。では、このカラーグレードはどのような基準でどのように評価されているのでしょうか。今回は、ダイヤモンドのカラーの評価の仕方や色の不思議についてお伝えします。
グレーディングの読み方
鑑定書では、カラーグレーディングの結果がアルファベットのDからZで記してあります。完全無色のダイヤモンドがDで、最高品質です。次にEとなり最下位のZまでの23段階で細かく評価が下されます。以下に、それぞれの評価ではどのような意味があるのかを述べておきます。
- D
- E-F
- G-H
- I-J
- K-M
- N-Z
無色透明 最高品質であり、極めて稀です。
無色 こちらも希少で、色がついているのが殆ど解りません。
無色に近い 高い価値があり、色を見つけるのが難しいものです。
無色に近い 希少価値が高く、わずかな色合いが見られます。
僅かな黄色 黄色などの色調が薄く見られます。
黄色の色調 黄色味があり、Zに近くなるにつれて濃くなります。
DとEのダイヤモンドは、完全無色で非常に優れた白色をしています。Fも完全無色で稀な白色をしており、最高級のものといえるでしょう。最高品質のものを選ばれたい方には、D、E、Fがお勧めです。
GからJにかけてはほとんど無色ですが、Jに近くなるほど色合いが現れます。K-Mになるとごくわずかですが黄色味が現れます。予算の都合などがある場合には、肉眼で色が解らない程度のGからJのものから選ばれると良いでしょう。
婚約指輪を選ばれる場合には、最低でもJ以上の評価のものを選びたいものです。ファッションジュエリーとしてのダイヤモンドの場合なども同じですが、どうしてももう少し落としたい場合は、最低でもMの評価のものまでを選ばれることをお勧めします。
何を基準として色を判別するの?
ほとんどの天然ダイヤモンドは、わずかながら黄色や茶色の色合いを含んでいます。インクルージョンと同じく、この色合いが無い場合は天然ではなくて人工かも?と疑っても良いかも知れません。
黄色、茶色の色合いがあるかの基準については、明度(Tone)と彩度(Saturation)のふたつの基準を元に鑑定されます。明度は色合いがどの程度暗いかを評価するもので、無色から暗い色のダークトーンへと傾きます。彩度はその色がどの程度鮮やかに現れているかという評価で、鮮やかさが高くなる程濃い色になります。
グレーディングはどうやって行われるの?
鑑定を行う際に必要なものは、整った環境とマスターストーン、そして鑑定士です。この3つの条件が揃っていなければ、正しい色の鑑定は出来ないのです。それでは、これら3つの条件についてそれぞれがどんな役割を果たしているのかを知っておきましょう。
- マスターストーン
- 整った環境
- 鑑定士
ダイヤモンドのカラーグレーディングを行う際には、必ず基準となるマスターストーンを使用します。マスターストーンは無色から黄色までの基準の色が揃っているので、ダイヤモンドの色の濃さを比較しながら鑑定を行えます。鑑定の際には、マスターストーンとダイヤモンドを並べて色を比較しながらグレーディングを行います。
部屋に入ってくる光や、証明の明暗などがダイヤモンドの色相にも影響するので、照明やカーテン、窓の位置など部屋の環境を整えることが必要となります。壁の色や家具などの内装の色が反射する場合もあります。鑑定を行う部屋は、必ずこういった事を考慮にいれた上で環境を完全に整え、専用の照明の下で鑑定を行っています。
環境とマスターストーンが揃ったら、重要なのはやはり鑑定士です。色の鑑定は特に困難を極めるので、経験を積んだ熟練鑑定士の判断が必要となります。専用の照明下でマスターストーンを置き、鑑定するダイヤモンドを逆さま(平らなテーブル面を下にする)にして置きます。そしてマスターストーンと色を比較しながらカラーの判別をします。この時、一人の鑑定士の判断のみに頼らず、必ず二人以上が鑑定して判断する様にしています。
なぜダイヤモンドに色が生じるの?
ダイヤモンドが生成される過程は、とてつもなく長いのです。何千、何億年もの間、深い深い地中のマグマの奥で高熱と高圧に耐えながら原石が作られていきます。
地中でダイヤモンドが生成される際、何かの原因で結晶の構造に不純物が入り込みます。ダイヤモンドは炭素原子の結晶でできていますが、これに窒素原子がわずかに入り込むことで青や紫色を吸収し、黄色を発色するのです。
ダイヤモンドは薄い黄色や茶色の色合いを持っているのが一般的ですが、異なる原因で赤や緑、青などの発色をすることが稀にあります。茶色、ピンク、赤などの発色の要因は結晶構造にゆがみが生じることからだといわれています。緑色は、ダイヤモンドが生成される際に近くに天然の放射性を持つ岩石からの放射線によって結晶構造に変化が生じたものといわれています。
ダイヤモンドは黄、茶、オレンジ、緑、青、グレー、紫、ピンク、赤、白、黒、などの多彩な色があり、その色合いも薄いものから濃いものまで様々です。肉眼でもはっきり確認できるほど強いカラーを持ち、グレーディングでZの評価を超えるものはファンシーカラーと呼ばれ、その価値は逆にグンと上がることになります。ダイヤモンド全体に色が行き届いたピンクや青などのものは、めったに採掘されることがなく大変希少価値が高いからなのです。
カラートリートメントって何?
天然のダイヤモンドには、色のくすみなどが見られることが度々あります。こういった色のくすみを人工的に処理して、見た目を美しくする処理をするのがトリートメントです。
くすみがかった色のダイヤモンドには、放射線を照射することで色を変えることが出来ます。この結果、石全体に色がほどなく行き届き、青、緑、ピンクなどの綺麗な色に生まれ変わります。他には高温度・高圧で着色したり、不純物質を蒸発させるコーティング法による着色などがあります。
インクルージョンがある場合は、レーザードリル処理が施されます。レーザー光線で穴をあけ、酸などを用いてインクルージョンを消去します。
こういった処理の後には、レーザードリルホールなどといった明瞭な特徴が鑑定の際に確認されるので、鑑定書に処理されたことが記載されます。
元々天然のダイヤモンドに処理を加えたものなので、天然に変わりはないのですが、人工的な処理が施された後はその価値も下がります。
鑑定書を読まれる場合には、こういった様に色やインクルージョンに対して何らかの処理が行われているか否かの部分も、必ず確認する様にしましょう。
まとめ
文中でもお伝えしました通り、正しいカラーグレーディングをするには整った環境と鑑定士の確実な目が必要とされます。だからこそ、そういった環境の下でグレーディングされた評価結果は信頼のおけるものなのです。
ダイヤモンドは無色透明に近ければ近いほど、その希少価値が高くなります。色の濃いファンシーカラーになると、これもまた希少価値があるので価格も上昇します。