ダイヤモンドを買う時に付属している鑑定書。そこには、ダイヤモンドの4C評価の結果が詳しく記載されています。4Cとは、カラット、カット、カラー、クラリティの頭文字を取ったものというのは、皆さまもすでにご存じなのではないでしょうか。今回は、ダイヤモンドの4Cの中から『カット』の評価の読み方やその意味について、詳しくお伝えしていきます。
カットグレーディングの読み方
カットの評価はふたつの要素から成り立っています。まずひとつは、プロポーションです。これは、クラウンの高さやガードルの深さ、テーブルの大きさからクラウン・パビリオンの角度やガードルの厚さまで、細部に渡る長さなどの数値が確実に測定されます。そしてブリリアンス(明るさ、光の反射)、ファイアー(虹色のきらめき)、シンチレーション(光の輝きときらめき)、パターン(明るさのコントラスト)を総合評価し、最高の輝きを放つようなプロポーションにカットされているかを評価するものです。
そしてもうひとつが、フィニッシュです。これは、ダイヤモンドの表面が正確に研磨されているか、という評価とファセット面が対称的にカットされているか、という評価をします。この部分では、カット職人の技術によって大きな差が生じるので、言うまでもなく職人による高い技術が求められることとなります。
以上のように、プロポーションとフィニッシュ(研磨と対称性)のふたつの要素を総合的に見て、最終的に評価したものを5段階のグレードから選びます。グレーディングの5つの評価は次にように分けられます。
Excellent
Very Good
Good
Fair
Poor
ご覧になってお分かり頂ける通り、一番上のExcellentが最高級で、下降するほど評価が下がります。GIAでは7万個のダイヤモンドと3850万のプロポーションセットを基本として作られた予測コンピューターモデルを使用し、鑑定の対象となるダイヤモンドのプロポーションを測定します。ダイヤモンドをフェイスアップ(テーブル面を下にして置く)にして、ブリリアンス、ファイアー、シンチレーションながどの程度放たれているかを測定します。その後、鑑定士の目でフィニッシュ(研磨や対称性)と、ファセットやキュレットの大きさや状態などが確認されます。
鑑定書を元にダイヤモンドを選ばれる場合、カットの等級評価がExcellentのものに越したことはありませんが、もしランクを落としたい場合ならば、仕上げ(Finish)の項目で研磨(Polish)と対称性(Symmetry)がVery Goodのものを選ばれることをお勧めします。
もうひとつ、国内で中央宝石研究所が発行する鑑定書のみに記載されている評価があります。それはカット等級、研磨、対称性の3つの項目全てがExcellentと評価され、カットが最高品質であると認められるものです。カットにおける3つの項目がExcellentと評価されたダイヤモンドはトリプルエクセレントと呼ばれ、一般の物より高い価値と価格が付きます。
ハート&キューピッドについて
ダイヤモンドを観察する際に特殊な装置を用いて見ることにより、不思議な輝きが発見されることがあります。これは、ダイヤモンドの上部分の側面であるテーブルに対称的な矢の形をしたものが8つ見られるのと同時に、下部分のパビリオンにも8つのハート型が現れるものです。この様な現象が起こるのは、カットの対称性が大変優れているからなのです。
この様なとてもキュートな光学現象は、ハート&キューピッドと呼ばれています。恋の矢を射止めるキューピッドの役割を果たしてくれるという意味があり、プロポーズする際の婚約指輪や、特別の想いを込めたプレゼントとして大変人気があります。
輝きを決める4つの特性とは?
ダイヤモンドが正確なプロポーションでカットされていると、非常に美しい輝きを放つことができます。この特性をブリリアンス、ファイアー、シンチレーション、パターンと呼びます。この4つの輝きの特徴について、簡単に学んでみましょう。
ブリリアンス
ダイヤモンドを上部のテーブル面から見た場合、白色の光が反射して輝きます。白色の輝きが明るいほど品質は高くなります。
ファイアー
外部から入った光が、ダイヤモンドの内部のあらゆる位置で反射し、虹色の光を発する現象です。
シンチレーション
ダイヤモンドを揺り動かしたときに生じる、きらきらとした輝きです。品質の良いものほどきらめきは多く、幾重にも重なった模様のような輝きが見られます。
パターン
カットされた面の配置条件やダイヤモンドから発する反射によって生じる明るさと暗さのコントラストです。
グレーディングを行う際の基準
カットグレーディングはどのようなダイヤモンドでも行われる、という事はありません。カットの評価を下すにはある程度の基準があり、その範囲内でないダイヤモンドは評価の対象にはならないのです。
では、その基準とは一体どういった事柄なのでしょうか?
こちらが、基準の範囲内に入る3つの条件となります。
- 標準のブリリアントカットが施されていること。
(ファンシーカットはカットグレーディングの対象外です。) - クラリティの評価がフローレス(FL)からI3までであること。
- カラーの評価がDからZまでであること。
御覧になってお分かりの通り、基本的にクラリティとカラーの評価は最上級から最下級まで全てをカバーしているので、問題はありません。やはり一番大切なのは、ブリリアントカットであるか否かということになります。
ブリリアントカットは、光を最大限に取り入れ、最大限に光を反射するようにカットされていなければなりません。ファンシーカットなどでは、デザインや石の特性を重視してカットするため、先に述べた輝きを決める4つの特性などがあまり強く現れないからです。
カットによって変わる光の屈折
クラリティやカラー、カラットなどは天然のダイヤモンドそのものが持っている特性です。しかし、カットだけは職人が手を加えることによって天然の美しさをさらに強調するものです。技術が高ければ高いほど輝きが増すことになり、内包や傷、色のくすみなどもカバーすることができるのです。
ダイヤモンドの外見の大きさだけを重視したカットでは、横の幅が広くなりすぎるので外部から入った光が内部で上手く反射できず、輝きが横道にそれていってしまいます。また、重さを重視した縦長のカットにしてしまうと、光が内部で奥底に入り込んでしまい、下の方で反射しているだけという結果になります。光を上手く取り入れて最高に反射するように計算された、カット重視のダイヤモンドは外部から入った光をまんべんなく綺麗に反射し、虹色のスパークるをきらきらと発色させます。
同じカラット数のダイヤモンドをふたつ並べてみると、カットの優れたものの方が、その優れた輝きのせいで実際のサイズより大きく見えるのです。
クラリティやカラーが同評価のふたつのダイヤモンドを並べた場合でも、やはりカットの優れたものの方がより一層白く輝いているように見えます。
まとめ
今回は、カットグレーディングの読み方についてお伝えしました。鑑定書を読む上で、カットの評価は一番最初に優先したい項目です。カットグレーディングが最高級に近いものなら、他のものはもう少し落としても大丈夫なのです。なぜなら、カット技術の高さにより少しばかりの欠点は隠されてしまうから。
きらきらと眩しく輝くダイヤモンドが欲しいけれど、インターネット上の写真だけでは何だか心配、という方は、まずカットグレーディングを確認してみましょう。ランクがExcellentであれば、輝きの美しさは確実です。
ダイヤモンドは、パッと見た目も大切ですが、やはりそれより大切なのが、鑑定機関で正確に分析された結果が報告されている鑑定書での評価です。鑑定書を正しく読んで、これからもずっと大切にできるような、確実なダイヤモンドを選ぶようにしたいですね。