婚約や結婚指輪として使われるダイヤモンドは、ラブストーリーを彩る大切な脇役として欠かせないアイテムです。中でも大きくて珍しい色のものは、希少価値のある特別な存在として、大切に扱われています。何世紀も前のヨーロッパでは、王侯貴族が権力や財力の証としてダイヤモンドを所有していました。そして現代では世界中の誰でもが手に入れられる様になりました。そんなダイヤモンドが世界で最初に発見されたのは、古代のインドでした。
今回は、古代インドで発見されたダイヤモンドについてお伝えしながら、その歴史の始まりを紐解いていきたいと思います。
神秘の国インドで発見されたダイヤモンド
イギリスの植民地になる以前のインドは、神秘的でミステリアスな国だというイメージが抱かれていました。伝統的に伝わるスピリチュアルな文化遺産があり、鉱物や野菜などの天然資源に恵まれた国として知られていたのです。
19世紀以前のインドでは、ダイヤモンドは豊富に採掘されていました。当時は、現在の様に地中に穴を掘って採掘する方法ではなく、河の中や河岸に流れ着いた原石を、人の手によって採取されていました。
この頃ダイヤモンドが採掘されていたのは、世界中でインドのみでした。
ダイヤモンドにはインドと同様に不思議な魅力があることから、両者は共に「ミステリアス」という共通のイメージで描かれるようになったのです。
この頃から、すでに投資として活用されていた
ダイヤモンドが世界で一番最初に発見されたのは、古代のインドです。
その後長い間、世界中のどこでも発見はされず、インドのみでダイヤモンドが採取されていました。紀元前6世紀頃に古代インドで形成された十六大国では、独自の通貨を使用していました。この頃の人々は、ダイヤモンドの重さを計るため、独自の単位も使用していたのです。
現代では、ダイヤモンドの大きさをカラットという単位で表します。古代インドにあった十六大国では、タンデュラ(Tandula)という単位が使われていました。これは、お米一粒の重さに相当するものだそうです。当時、十六大国の通貨はルパカ(Rupaka)と呼ばれていました。3世紀に記されたサンスクリット語の値段表によると、20タンデュラのダイヤモンドには、20万ルパカという値段が付いていたという事です。
十六大国の中でも裕福な層の人々にとって、ダイヤモンドは大変価値のあるものでした。古代の時代には、現代の様に大金を預かってくれる銀行のようなものはありませんでした。彼等は、多額の現金を一粒のダイヤモンドに交換するようになりました。そうする事により、財産の保管や移動が軽く済むようになり、盗難などのリスクも避ける事ができるからです。ダイヤモンドが投資として活用できるという事が、すでに古代の時代から証明されていたのです。
価値のある原石として認められていた
古代インドでのダイヤモンドは、現代の様にジュエリーなどの宝飾品として使われてはいませんでした。カットや研磨をすることさえも許されていませんでした。それなのに、どうして古代インドの人たちは、ダイヤモンドを価値のあるものだと認めていたのでしょうか?
それには、二つの理由がありました。ひとつは、道具として使える事が出来るから。そしてもうひとつは、形而上学的な性質を持っているからです。十六大国はスピリチュアルな文化を中心として栄え、その中でも特にダイヤモンドは幸運の源として扱われていたそうです。
プラーナ文献というヒンドゥー聖典があります。古代インドにおける宝石学で最も権威のあるものだと推測されており、文献の一部では、「フローレスのダイヤモンドを所有する者は、富と健康、食物の収穫、妻や子宝に恵まれる。そして、魔物や恐怖からも守ってくれるであろう。」と書かれていたそうです。
青いホープダイヤモンド
世界で最も有名な青いダイヤモンドといえば、ホープダイヤモンドが思い浮かびます。現在では45.52カラットのクッションカットという大きさですが、インドで最初に発見された原石は、カットされた物よりも数倍大きい物だっただろうと語られています。
青いホープダイヤモンドは、最初は、インドで宗教の象徴とされる銅像の目の部分に嵌め込まれていました。その後盗難に遭い、フランスの商人タヴェルニエが購入します。そしてルイ14世に売却しました。その後数々の所有者の手に渡ります。そして、手にした人達には悲劇が続々と訪れ、これはインドの司祭の呪いによるものなどという噂が流れだしました。しかし、これらは全て、宗教上最も重要とされる神の目に嵌め込まれた宝石を、誰の手にも触らせないという理由から生まれた逸話だという噂もあります。
古代からパワーストーンとして使われていた
古くから伝わる東洋医学の分野でも、ダイヤモンドは多くの癒し効果を持つと信じられてきました。青色を伝導する性質は、宇宙のエネルギーと関係があり、肌やリンパ線、生殖機能、骨などに良い効果をもたらすと言われています。原石の形も大切だと言われ、形状によっては生殖機能に良い物などもあると言われています。傷や内包物の無いフローレスのものだけに、こうしたヒーリング効果があると言われていました。。
ダイヤモンドには様々なカラーものがありますが、その色は職業面にもパワーをもたらすと言われました。例えば、無色のものは知識や精神的な面に力を与えます。ピンク色は統治者や兵士達に強いパワーを与えると言われました。
古代インドでは宝飾品として扱われていなかった当時でも、ダイヤモンドを身につけることに意義がある、と言われる日があったのです。スピリチュアル文化が繁栄していた当時、人々は占星術を読むことにも夢中でした。自分の占星術のチャート上で、魚座または牡牛座の上に金星が上昇している時期があるとします。この時、金星の象徴である金曜日にダイヤモンドを身につける事が許されていました。そうする事で、幸運が舞い込むと信じられていたからです。
古代インドでは、スピリチュアルな面だけではなく、ダイヤモンドをもっと実用的に使おうと考えた人たちも存在しました。地球上で最も硬い物質であるダイヤモンドの価値を見極め、上手に利用しようと考えたのです。彼等は、硬くて強いダイヤモンドを、パールや宝石類のカットや彫刻をするために使い、さらに工具や道具を作るためにも利用したのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、ダイヤモンドの歴史の始まりについてお伝えしました。古代インドで発見されたダイヤモンドは、知恵のある人々によって様々な用途に使われてきました。取り引きが行われ、現金と引き換えに財産として投資され、パワーストーンとしてお守りになります。宝石や硬い物などをカットする道具として使用され、後にダイヤモンドそのものがカットされた途端、伝説として語り継がれる様になりました。
古代インドで誕生したダイヤモンドとの関係は、現代にもしっかりと継承されています。そして、当時発見されたダイヤモンドの多くは、インドのマハラジャが身につけたり、ヨーロッパの王族などに所有されました。希少価値が大変高いため、現在では、各国の博物館などに所蔵されているものも多くあります。
文中でもご説明した通り、古代インドとダイヤモンドは、どちらもミステリアスという印象があります。様々な伝説や逸話が語られたのも、ふたつの神秘的なイメージがぴったりと重なり合ったからこそなのでしょうね。