ダイヤモンドのクラリティ(透明度)とはインクルージョン(内包物)がない透明度の程度を表します。
天然のダイヤモンドは炭素原子を包む岩石が高温で溶け、炭素原子を放出させこの原子が適度な高温高圧環境の中で結びつきダイヤモンド結晶の形成となります。
このプロセスでインクルージョンと呼ばれる色々な内部の特徴、ブレミッシュと呼ばれる外部の特徴が表れます。
ダイヤモンドのクラリティ評価はこのような特徴の数や大きさ、性質、それらの位置、そしてこの要素が石の外から見てどのように見えるのかが含まれます。
全く不純物のないダイヤモンドはありませんが、全くの透明に近づくほど価値は高くなります。
評価は6つに分かれており、その内いくつかが細分化され全部で11のグレードに分かれています。
フローレス(FL):10倍の倍率でインクルージョンもブレミッシュも見受けられない
インターナリーフローレス(IF):10倍の倍率でインクルージョンが見られない
ベリーベリースライトリー(VVS-1、VVS-2):インクルージョンが非常に少なく専門家が確認しても確認が難しい
ベリースライトリー(VS-1、VS-2):10倍の倍率でインクルージョンがなんとか確認可能だが、ごく僅かな程度
スライトリーインクルーテッド(SI-1、SI-2):10倍の倍率でインクルージョンが確認出来る
インパーフェクション(I-1、I-2、I-3):10倍の倍率でインクルージョンが確認でき、透明度や輝きにも影響を与える程度
殆どのインクルージョンや傷は本当に小さなものなので、専門家以外で確認することは難しく、素人が肉眼で見るとVS1とSI2のダイヤモンドには違いが見当たらないかもしれません。
ですが、このグレードの違うダイヤモンドは品質の面では大きく異なり価格にも大きく影響します。
真に透明で不純物の殆どないダイヤモンドは本当に貴重でフローレス(FL)やインターナリーフローレス(IF)は殆ど市場に出回りません。
その為、比較的小さなダイヤモンドであっても価格は高額になってしまいます。
エンゲージリングを選ぶ際はVS-1以上と言われることが多いかと思いますが、普段の生活で10倍の倍率でダイヤモンドをまじまじと見ることは少ないです。
物によってはインクルージョンが分かりにくい位置にあってSI-1というダイヤモンドもあります。
SI-1あれば充分な輝きを見せてくれるダイヤモンドも多いのです。
大きめのダイヤモンドを選びたい方は、クラリティはそれほど重視せず選ぶと良いでしょう。
インクルージョンって何?
小さな結晶が形成時ダイヤモンドの中に閉じ込められることがあります。
この結晶が成長するにつれて原子構造に不規則が生じます。
これがインクルージョンの原因です。
以下はインクルージョンの種類です。
インクルーデット クリスタル(Crystal : Xtl)
ダイヤモンド内部に含まれたダイヤモンドやその他の鉱物。
黒く見えるインクルージョンでグラファイト(石墨)などの他の鉱物の結晶のことをカーボンと呼ぶ。
フェザー(Feather : Ftr)
ダイヤモンドの内部に生じるクリベージとフラクチャーの2種類の割れのこと。
クリベージは結晶方向に平行な割れ。
フラクチャーは、特定の割れやすい方向(へき開方向)以外の割れのこと。
ピンポイント(Pin Point : PP)
非常に小さな白色の結晶で小さな点に見えるインクルージョン。
ピンポイントは、1個単体の場合と、幾つも集まったグルーブの場合がある。
クラウド(Cloud : Cld)
ダイヤモンド内部にみられるモヤっとした乳白色の曇り。
煙のようなもやの正体は非常に小さなピンポイントの集合体。
レーザードリルホール(LDH)
レーザー光線で穴を開けダイヤモンド内部の目立つインクルージョンを除去して、透明度をあげる人工的な作業。
表面からみたい印象を良くするための作業なので、パビリオン側からダイアモンドに穴を開けるのが通常。
反射する光を遮ってしまう原因となり輝きに影響するため、カーボンが目立つ場所にあったり小さくてもいくつもあったり、一つだけど大きいものであると敬遠されることが多いです。
カーボン以外にフェザーやピンポイント、クラウドも目立つ部分にあると価値を下げる要因になってしまいます。
特に白くもやっとしたクラウドは輝きを損ないやすく、白っぽく輝くダイヤモンドだともやが目立ってしまいこれも評価を下げてしまいます。
ブレミッシュって何?
研磨済みのダイヤモンドの表面に見られる結晶面の残り、研磨過程に起こる傷などを表す外部特徴のことをブレミッシュと言います。
鑑定した際に鑑定機関で保管するワークシートへの記載はしますが、鑑定書(グレーディングレポート)へは識別特徴以外でのブレミッシュ項目の記載はありません。
以下はブレミッシュの種類です。
・ピット(Pit)
小さな穴、とても浅いくぼみ、白い小さな点
・ニック(NK)
クリベージに沿った欠け、欠損部。
・アブレージョン(Abrasion : ABr)
ファセット上の連続した小さな欠け(白い点々)や他のダイヤモンドと一緒に保管されダイヤモンド同士で出来た摩耗。
・スクラッチ(Scratch : S)
ダイヤモンド同士擦れてできる白い引っかき傷。
・バーンマーク(Burn Mark)
ポリッシュマーク(PM)とも呼ばれる。
研磨時の加熱で起こる表面の白色の曇りや焦げ。
・サーフェイスグレイニング(Surface Grain line : SGr)
グレイニングとも呼ばれる。
ダイヤモンドの結晶構造の不規則性が目に見える形で表れた、影のように見えるライン。
・ナチュラル(Natural : N)
原石のままの部分(生地)。
・エキストラファセット(Extar Facet : EF)
ラウンドブリリアントカットであれば決められた58面以上に多い余分な研磨面のこと。
例えばガードルを仕上げる時に小さなカケが出来たとする。
そこだけを磨り落とし、特別に小さなファセット面をつける。
この特別に付けられた小さなファセット面をエキストラファセットと言う。
ニックやピット、スクラッチやアブレージョンはクラリティーグレードの中で評価され、ナチュラルやエクストラファセットは、シンメトリーの中で評価されます。
因みに、サーフェイスグレイニングがあるとフローレスの評価は得られませんが、インターナリーフローレスにはなり得ます。
その他のクラリティーには影響は及ぼしません。
また、ナチュラルはブレミッシュとは言えど、意図的に原石の面を残すことでダイヤモンドを最高の効率でカットしていると言う、研磨する人(カッター)の技術の高さとして見せる意味合いもあります。
クラリティ評価で影響があるのはインクルージョンで、ブレミッシュはあまり影響がないとされていますが、実はダイヤモンドにこだわるならとても重要な部分であると言えます。
ニック、スクラッチ、ピット、アブレージョンがあれば取り扱いをしない業者もありますし、鑑定機関で問題ないからとエクセレント評価をされていても、ナチュラルやエクストラファセットがあれば扱わないと言うところもあります。
そこまで特別なこだわりはないと言う方であれば、ニック、ピット、アブレージョンは問題があるかと思いますが、ナチュラルやエクストラファセットについては、それが目立ってしまうのであれば鑑定機関からエクセレント評価はされませんので、そこは鑑定機関の判断通りで良さそうです。
いかがでしたでしょうか?
日本ではカラットよりも重要視されると言われるクラリティですが、実はインクルージョンやブレミッシュについては知られていないことが多いです。
このあたりのことも知っておくと、どの程度のインクルージョンやブレミッシュならあっても良くて、よりコストパフォーマンスの良いダイヤモンドとなり得るかも分かります。
素敵なダイヤモンドとの出会いお手伝い出来れば嬉しいです。