ジュエリーショップに並ぶたくさんのジュエリーは、たくさんの人の手を介して商品となり、店頭に並んでいます。ジュエリー業界を支える人々にスポットを当ててみました。
宝石研磨職人
採掘した原石の状態である石をカット、研磨、販売する職業です。一人前の宝石研磨職人になるまで、十年以上の歳月がかかります。昔は「宝石のまち」とされる甲府だけでも2000人以上の宝石研磨職人がいましたが、近年の経済状況や後継者不足等の問題により、減少に歯止めが利かなくなっています。研磨された宝石の多くは輸入のものに頼っています。
ジュエラー、ジュエリー卸会社
宝石を買い付け、消費者に販売する仲介役になっているのが宝石商です。今はあまり「宝石商」という言い方はしなくなり、ジュエリーに携わる職業の人を「ジュエラー」と言います。宝石を仕入れ、客先の意見などを取り入れながらどんな商品を作るか、デザイナーや工場とコンタクトを取り、製品を作って小売店に販売するのが、ジュエリー卸会社です。
宝石鑑定士
研磨された石を鑑定するのが宝石鑑定士の仕事です。その石が本物であるか、判定、格付けする技術を持った人に与えられる資格です。ダイヤモンドの場合は4C(カラー、カット、クラリティ、カラット)の等級付けをして、鑑定書を作成する、その他の宝石は鑑別書を作成するのが宝石鑑定士の主な仕事です。国家資格ではなく民間資格で、国内外の民間の機関が宝石鑑定にかかわる資格を取り扱っています。どの機関で学ぶかによって、その内容も難易度も変わってきます。
世界的に有名なのはアメリカのGIA(米国宝石学会)のGGという資格です。GIAは宝石鑑定に関して一番の権威がある機関だと言われていて、GIAが発行する鑑定書は最も信頼性のあるものとして扱われています。GGでは26週(6か月・授業時間780時間)のすべてのカリキュラムを終了し、最終的な試験に合格するとディプロマが授与されます。宝石鑑定士は、宝石鑑定機関で鑑定の仕事をするほかは、ジュエリーショップや百貨店の宝飾品売り場、ジュエリーメーカーで、宝石鑑定や買い付けなど、さまざまな仕事をしています。
ジュエリー職人・クラフトマン
形になっていない地金と研磨された石で、ジュエリーとしての形にするまでがジュエリー職人の仕事です。一人前のジュエリー職人になるには、十年以上はかかると言われています。彫金を学べる専門学校を卒業し、企業や工房に就職するジュエリー職人がほとんどです。壊れたジュエリーの修理や、指輪のサイズ直しをするのもジュエリー職人の仕事です。一点もののオーダージュエリーを作製することもあり、お客さんの希望を聞きながら形にします。
ジュエリー工場・工房
ジュエリー工場では、ジュエリー職人がすべて手作業でやるところを、機械などを使って大量生産することができます。ジュエリーの原型となるワックスを加工する、鋳造で上がってきた製品を研磨する、石留めをするなど、素材からジュエリーへと変身させるのがジュエリー工場です。研磨や石留めなど人の手が必要な部分も多く、熟練した職人が携わっています。出来上がった商品はジュエリーメーカー・卸会社に納品されます。
ジュエリーデザイナー
指輪、ネックレス、ピアス、イヤリング、ブレスレットなどのデザインを考え、デザイン画を描くのがジュエリーデザイナーの仕事です。ジュエリーのデザイン画は、設計図の役割をするので、原寸で描かれます。海外や国内でどんなジュエリーが人気があるか、需要のあるジュエリーはどんなものか?などマーケティングをして、使用する石や地金の量、コストなどを考慮しながらデザインを起こします。そのため、ジュエリー全般に関する知識が必要になってきます。オーダーメイドでジュエリーを制作する場合は、お客様の要望を聴きながら、デザイン、地金の種類、石の種類、予算を考慮しながらデザイン画を作成します。ジュエリーデザイナーは、企業内のデザイナーや、独立してアトリエを構えている人がいます。美術系大学や、ジュエリーデザインを学べるジュエリー専門学校を卒業しているデザイナーが多いです。
ジュエリーコーディネーター
ジュエリーコーディネーターとは、ジュエリーの商品の選択をアドバイスする、販売のプロのことを言います。具体的には、日本ジュエリー協会が主催する「ジュエリーコーディネーター検定」の試験に合格することで、認められます。ジュエリーコーディネーターの資格は、ジュエリー産業にとって必要な要素が含まれているので、販売員だけでなく製造、卸売などあらゆる職業に役立ちます。
<ジュエリーコーディネーター3級>
ジュエリーの歴史、市場、素材、商品、販売、コーディネートに関する基礎知識を持ち、消費者に説明、接客、販売ができる。
<ジュエリーコーディネーター2級>
ジュエリーの歴史、市場、素材、商品、販売に関する高度な専門知識を持ち、コーディネート、ファッションの基礎知識があること。消費者に提案、コンサルタント販売、在庫の効率化、人材育成、指導、店舗の運営補佐ができる。
<ジュエリーコーディネーター1級>
ジュエリーに関する高度な専門知識と高度な接客、販売の実務技術を持ち、豊富な経験と見識で人材の育成、指導、店舗運営ができる。
ジュエリーアドバイザー
ジュエリーアドバイザーは、ジュエリーショップや百貨店の宝飾品売り場で接客をする販売員で、仕事内容はジュエリーコーディネーターと同じです。販売員は客様に商品の説明をしたり、コーディネートの仕方をアドバイスをします。ジュエリーに関する知識を蓄えておくことはもちろんのこと、お客さんとのコミュニケーションが必要不可欠で、営業力も必要になる仕事です。また「冠婚葬祭にはどんなジュエリーを身に着けたらいいか」「身に着けて行ってはいけないジュエリーは?」など、ジュエリーに関するマナーも熟知しておく必要があります。ジュエリーアドバイザーになるには、特に資格などはありませんが、ジュエリーコーディネーター検定に合格しておくといいかもしれません。
宝石の街、甲府・御徒町
日本には「宝石の街」と呼ばれる街が二つあります。山梨県の甲府と、東京の御徒町です。これらの街では宝石にかかわる職業に就く人がたくさんいます。
宝石の街、甲府
甲府は、ドイツのイーダオーバーシュタイン市とならび「世界二大宝石加工の街」に数えられるほど宝石加工が盛んです。甲府ではたくさんの水晶が採掘されていたことから、研磨加工職人が多くいました。ジュエリー工場や工房も増え、ジュエリーの取引や加工をする人が多く集まる街となりました。現在でも、国内で生産されるジュエリーの3割は甲府で作られています。
ジュエリータウンおかちまち
御徒町は、日本で唯一の宝飾品問屋街です。宝飾品問屋街としての歴史は江戸時代にさかのぼります。御徒町付近は数えきれないほどの寺社があるため、仏具や銀器の職人が多く集まってきました。かんざし、帯留めなどの小物を納める業者も多く、明治の中頃になると指輪などの宝飾品を加工する業者が増え、現在の御徒町の原型となりました。第二次世界太戦後は、上野でアクセサリーや時計を売るアメリカ兵がいて、その青空マーケットは現在のアメ横の母体となりました。上野や御徒町は宝飾業者同士の交換会を行う「市」となり、宝飾取引の中心地としての地位を確立しました。現在も多くの宝石卸会社、宝石鑑定所、工房、パーツ店などが御徒町に集まっています。