ジュエリーを語る上で欠かせない存在と言えば、ゴールドです。紀元前の古代エジプトの頃ではすでにジュエリーとして使用され、ギリシャ神話や旧約聖書にも登場。人類に最も愛される金属として古くから親しまれてきました。
そんな古い歴史を持つゴールド。その魅力と歴史について、ちょっぴりひもときながらお話ししていきます。
古代の時代に愛されたゴールド
金はラテン語で「朝の光の色」という意味があります。人類が初めて金の精錬技術を手に入れたのは紀元前6000年頃でした。1922年に考古学者のレオナルド・ウーリー卿が都市国家ウルの王墓を発掘します。ここには、古代シュメール人が金の装飾品を使用していた記録が残されていました。
紀元前1300年頃の古代エジプトでは、有名なツタンカーメン王の黄金のマスクが作られています。この時代に金は珍重されており、採掘された金は全てファラオの元に集められ、豪華な装飾品が制作されました。金は、王の権力を主張するものでもあったのです。太陽を神と信じていた古代エジプトでは、黄金の輝きを放つゴールドはまるで太陽そのものだったのでしょう。マスクを始め棺や装身具、神殿などが全て金で装飾されていました。
古代のインカ帝国では、金の採掘が盛んでした。そのために国は大変裕福でしたが、ある日スペインによって金や神殿など大切なもの全てを奪われてしまい、ついにインカ帝国は滅びることになってしまったのです。
ギリシャ神話に登場する、都市プリギュアの王ミダース。童話「王様の耳はロバの耳」の中で、ロバの耳になってしまった王様です。黄金を愛してやまなかったミダース王。ある日ミダースは友人の養父を助けたお礼に希望のものを捧げると言われ、「自分が触れるものを全て金に変えて欲しい」と要望します。その願いが叶い、ミダースは金に囲まれます。しかし、喜んだのもつかの間。ミダースが触れた恋人も食物も水も全て硬い金となってしまった…というお話です。
フランスで大流行したゴールド
フランスはその昔、共和制からナポレオン帝政、その後ルイ王朝の復活、そしてナポレオン三世帝政へと激しく移り変わっていました。フランス革命以降目まぐるしく移り変わる歴史の中で、人々が信じたのがゴールドでした。当時、腕の良い宝飾職人達によって素晴らしい宝飾品が制作され、フランスの上流社会で金はたちまち大流行しました。現在でもフランスで一番好まれている金属は、伝統のあるゴールドなのです。
アメリカのゴールドラッシュ
1848年にカリフォルニアで金鉱が発見されました。このニュースと共に、世界中から金を求める人たちで溢れ、1949年に採掘のピークを迎えます。カリフォルニアの金鉱は最大のものでしたが、1951年にはオーストラリアでも金鉱が発見されています。
ゴールドラッシュで金が発見される以前は、金はとても希少な存在でした。少量の金を上手に使い、さらに豪華なジュエリーを作らなくてはなりません。そのため、宝飾職人はハンマーでたたいて薄く延ばした金でチェーンを作ったり、表面に模様を見せる様に裏側から打つなどの細かい作業を行いながら、技術を開発してきたのです。こういった技術は芸術作品として現代にも継承され続けています。
色々なカラーがあるゴールド
ゴールドには素材そのものの金色だけではありません。ジュエリーとしてホワイト、ピンクが一般的に出回っています。ゴールドに他の金属を何パーセントか混ぜる事で、色に変化が起こります。ニッケルやパラジウムを混ぜるとホワイトゴールドになり、銅を混ぜるとピンクゴールドになります。見た目には硬そうな金ですが実は軟らかく、他の金属を混ぜることで強度を高くすることが可能となるのです。
国によって金の純度も異なります。一般的に日本では18金、アメリカは14金、イギリスは9金、フランスとイタリアは18金が普通です。
ブライダルリングとしてのゴールド
欧米でブライダルリングと言えば、昔からゴールドが主流です。日本ではプラチナを選ぶのが一般的ですが、最近はゴールドの人気も上昇してきています。日常で身に着けているジュエリーにゴールドが多く、結婚指輪も他のジュエリーとコーディネートしやすいゴールドを選ぶというのが理由です。イエローゴールドのみならず、プラチナと同系色で価格も安くなるホワイトゴールドや、日本人の肌になじみやすくて可愛い色のピンクゴールドなど選択が多くなったのももう一つの理由といえるでしょう。異なる色のゴールドで婚約・結婚指輪のペアを作ったり、夫婦で違う色のゴールドの指輪を交換するなど、選択技も増えています。
ゴールドのお手入れの方法
ゴールドは一見硬くて強い素材の様に見えますが、実は意外と傷つきやすいのです。純度が高くなる程軟らかくなるので、注意が必要。毎日身に着けている指輪などは、良く見ると細かい傷が沢山付いているのです。汗などが付くと表面が酸化して色にくすみが出ます。スプレーや化粧品、香水などが付着すると光沢に変化が出ることもあるので、ジュエリーを着けるのは一番最後にする様に習慣をつけましょう。
日常のお手入れの仕方は、中性洗剤を溶かしたぬるま湯で優しく洗うか、柔らかい歯ブラシなどで軽くこすり洗うなどした後、水でよくすすぎ、水分をふき取ります。水洗いせずに、柔らかい布で簡単にふき取るだけでも大丈夫です。ジュエリーを磨いてくれるなどのサービスを行っている宝石店もあるので、傷が良く目立つ様でしたら相談してみましょう。
財産として価値のあるゴールド
昔から金は世界中で王のみが所有するものとして、大変重要扱いされてきました。現代では、金は蓄財の手段のひとつとして貴重な存在となっています。資産として金を蓄えるのが習慣となっている国も多くあります。特に近頃は金の価格が急上昇しており、世界中で売買をする人たちが一気に増加しました。金相場は長い目で見れば安定しており、戦争や革命などが起きてもその価値が変わることがありません。そのまま身に着けて財産を移動させる事ができるので、政治が不安定な国では紙幣よりも信用されてきました。タイでは24金のジュエリーを買うのが一般的で、さらに裕福な人々は金塊を買います。香港では結婚祝いに金のジュエリーを贈る習慣があります。
金にはkの刻印が必ず刻まれています。これは純度を表すカラットの意味。総重量の99.9%以上が純粋な金の場合は24k。金が全体の75%の場合は18k。この場合、残りの25%はニッケルや銀などが混合されています。日本では18kが主流ですが、中国やタイでは24kに人気があります。金はその日のレートによって価格が変わります。これは世界中どこでも同じです。売買する前には当日の価格を調べた上で決断されると良いでしょう。
まとめ
ゴールドはその昔からジュエリーのみならず、装身具や装飾品、戦車などの武具や楽器などに施される金細工として、そし価値のある金貨として歴史に煌びやかな輝きを与えてきました。
6000年以上も前に人類が金の精錬技術を手に入れてからというもの、変わらずにずっと愛され続けている金属。エジプトのファラオやナポレオンを魅了し、ゴールドラッシュでは人々を熱狂させました。
多彩なカラーとコーディネートが楽しめるので、2色のコンビや3色のスリーカラーなどの組み合わせもお洒落です。強度があるのでお手入れも簡単。ファッションを楽しみながら財産としての価値もある優れた金属、ゴールドは時代を超えて世界中で愛される素材なのですね。