いくつもの自然現象が重なり合って作り出す絶景、ダイヤモンドダストを見たことがありますか?雪国にお住まいの方や、雪が好きで極寒地に行かれる方でないと、なかなか見ることができないかもしれませんね。北海道でも年に何度かしか見られないというダイヤモンドダスト。その希少さは、まさにダイヤモンド並みでしょう。厳しい寒さの中で美しく輝くとても珍しい気象現象、「ダイヤモンドダスト」について調べてみました。
ダイヤモンドダストとは?
極寒の時期に、いくつもの気象条件がそろった時だけに出現する、美しい自然現象です。
ダイヤモンドダストは「細氷」(さいひょう)とも言い、大気中の水蒸気が昇華してできた、ごく小さな氷の結晶が降る現象のことを言います。太陽の光に輝いて見えることから「ダイヤモンドダスト」と呼ばれています。キラキラ輝く様子から「天使の囁き」とも表現されます。
ダイヤモンドダストが見られる条件は?
- 気温は氷点下10度以下
- 風がなく空気が澄んでいること
- 朝方に見えやすい
- 視程が1km以上あること
- 快晴であること
- 湿度があること
条件がそろっていても、思ったほどダイヤモンドダストが発生しないこともあるそうです。
どうやってダイヤモンドダストはできるの?
大気中の水蒸気が冷やされて微細な氷の結晶となり、ゆっくりと地上に降ってきます。舞う雪と違う点は、太陽の光に照らされてキラキラと舞うところです。晴れた日には放射冷却現象が生じるので、地上の気温が一気に下がる冬の晴れた朝方が、条件がいいようです。ダイヤモンドダストを見るためには、天気予報で冬晴れの寒い朝を狙いましょう。
晴れ?それとも雪?
ダイヤモンドダストが発生している時は、空は晴れているのですが、ダイヤモンドダストは雪に分類されるので、天気は「雪」になります。
どこで見られるの?
ダイヤモンドダストは、日本では真冬の北海道内陸部で多く見られます。
旭川市
北海道内でも有数の寒冷地であり、氷点下30度まで下がることも多いので、条件さえそろえば街中でもダイヤモンドダストを見ることができます。盆地という地形も条件が揃いやすいようです。
名寄市
旭川と同様に極寒地であり、日本一の雪質だと言われている「名寄ピアシリスキー場」があります。スキー場で見るダイヤモンドダストは、まさに絶景です。スキーをしながらダイヤモンドダストを見るのも夢ではありませんね。
十勝平野
晴れる日が多く、比較的気温も低めな十勝平野は1~2月に気温が-20℃以下になることもあるので、ダイヤモンドダストを見ることができます。陸別町ではオーロラを観測したこともあるので、ダイヤモンドダストと両方見ることができたらどんなに素敵でしょうね。
弟子屈町の川湯温泉
摩周湖や屈斜路湖が近くにある弟子屈町も、ダイヤモンドダストが発生するポイントです。川湯温泉では、ダイヤモンドダストにちなんだイベントが毎年開催されています。
美瑛
観光地として人気の高い美瑛は、川沿いや山間部で壮大なダイヤモンドダストを見ることができます。
幌加内町
-41℃という日本国内最低気温を記録した幌加内町でもダイヤモンドダストが観測できるので、ダイヤモンドダストにちなんだイベントで町おこしをしています。そばの産地、ワカサギ釣りの名所としても有名な町です。
山形県蔵王
北海道以外では、山形県蔵王山の霧氷林の中などでも見られます。樹氷とダイヤモンドダストが見られる場所は、蔵王のほかにはなさそうです。朝一番のリフトで山頂まで行くと見られるチャンスが高くなりますが、ナイターでスキーを滑りながら見られることもあるそうです。
雪国でなくても見られるチャンスが…
ダイヤモンドダストは一般的には、きわめて低温でないと発生しないとされていますが、茨城県つくば市で、-2度という気温ながら局所的に発生したということもありました。熊本県の阿蘇山で気温-11度で観測したという記録もあります。雪国でなくても、条件が揃えばダイヤモンドダストを見るチャンスはありそうですね。
いつごろ見られるの?
ダイヤモンドダストは、気象条件の揃いやすい1月~2月に観測されることが多いです。山形県の蔵王山では、3月に発生することもありました。
氷霧とはちがうの?
霧が冷やされてできた「氷霧」は霧に分類されるので、ダイヤモンドダストと似ていますが厳密には違います。氷霧とは、小さな氷の結晶が大気中を浮遊する現象で、ダイヤモンドダストよりも小さいことが特徴です。氷霧が発生する条件は、氷点下3℃以下で大気が安定し、視程が1㎞未満である時です。
人工のダイヤモンドダストを見てみよう
北海道上川市にある「北海道アイスパビリオン」は、世界最大級のユニークな氷と寒さをテーマとした体験型美術館です。一年を通して寒さ体験を楽しむことができます。25年をかけて制作した氷柱群は、氷壁600㎡、氷量1000トンを誇ります。アイスホールは通年-20℃度に保たれていて、レンタルの防寒着を着て中に入ると、360°見渡す限りの氷の世界が広がっています。
ここでは、人工のダイヤモンドダストを見ることもできます。氷の結晶がキラキラと舞い踊る、神秘的な光景を楽しめます。そのほかには、日本最低気温の-41℃の極寒体験ができたり、なんでも凍ってしまう不思議な体験コーナーや、「流氷の天使」と呼ばれるクリオネの展示などがあります。
ダイヤモンドダストにちなんだイベント
ダイヤモンドダストが多く観測される北海道川湯温泉では「ダイヤモンドダスト in KAWAYU」というイベントが行われています。人工発生によるレインボーダイヤモンドダストや、スノーキャンドル作りなど、様々な催しを楽しむことができます。
川湯神社では「ダイヤモンドダストを見よう」というイベントもあります。神社横の温泉川から立ち上る湯気が、-10℃以下になり大気中の水蒸気が昇華すると、ダイヤモンドダストが発生することがあります。温泉と寒さが出会う川湯ならではの神秘的な現象です。
-41℃という日本国内での最低気温を記録した北海道幌加内町では、ダイヤモンドダストが見られる町として観光に力を入れています。毎年2月には「天使の囁きを聞く集い」として、極寒地の冬の夜を体感するイベントが行われています。
楽曲としてのダイヤモンドダスト
ダイヤモンドダストをテーマにした楽曲もあります。氷室京介さんの「ダイヤモンド・ダスト」は1999年に18枚目のシングルとして発売され、オリコン3位、30万枚越えのヒットを記録しました。作詞が森雪之丞さんで、ドラマ「氷の世界」の主題歌にもなりました。のちに大黒摩季さんがカバーしています。
松任谷由実さんの「ダイヤモンドダストが消えぬまに」は、1987年に発売されたアルバムのタイトルにもなり、同年のレコード大賞で、アルバム優秀賞を受賞しています。しかしながらこの曲の中でのダイヤモンドダストは、厳冬に見られるダイヤモンドダストそのものではなく「ダイバーのレギュレーターから出る泡」と「シャンパンの泡」をダイヤモンドダストに見立てたもののようです。1番が恋人と二人のクリスマス、2番が1年後恋人と別れて過ごす一人のクリスマスと対になっています。
ジュエリーにもあるダイヤモンドダスト
指輪などの仕上げの仕方に「ダイヤモンドダスト加工」と呼ばれるものがあります。地金を特殊な方法で削り、小さな凹凸を作り出すことによって輝きを出しています。マリッジリングやピンキーリングなどにほどこされる仕上げの方法です。別名スターダスト加工とも呼ばれ、光が当たって表面がキラキラ光り輝くさまは、ダイヤモンドダストのような美しさです。