ダイヤモンドのカットについて
磨けば光るダイヤモンドの原石ですが、磨かなければ少しも光りません。価値のあるダイヤモンドになるかどうかは、カット(研磨)する人の腕にかかっています。ダイヤモンドの価値を評価する「4C」(カラー、クラリティ、カット、カラット)のうちのひとつの「カット」についてご紹介していきます。
ダイヤモンドのカットの歴史
ダイヤモンドの美しさは、研磨されてこそなのではないでしょうか。今のようなカットのスタイルになるまでどのように変化していったか、ということについて調べてみました。
<14世紀>
ダイヤモンドのカットが始まったのは、14世のヨーロッパでのことでした。ダイヤモンドがあまりにも硬いための、なかなか思うようにカットができませんでした。ダイヤモンドをできるだけカットしないことで、ダイヤモンドの神秘的なパワーが発揮される、と考える人もいたそうです。それでも形の悪い石を、表面を平らにしたり、正八面体にカットしたりしていたようです。どんな方法でカットしていたかというと、同じダイヤモンドを使って硬いダイヤモンド削ると、いう現在でも続いている方法でした。ダイヤモンドカッター(カット職人)の役割は、石の形とバランスを整え透明感を出すことでした。
<15~16世紀>
15世紀になると、石の表面を平らにして八面体にカットするだけでなく、テーブルカットという技術の進歩がありました。のちに出てくる「エメラルドカット」や「スクエアカット」につながるものです。そのような進展があったのは、「ダイヤモンドの柔らかい方向」を発見したことが大きかったのです。ただ、研磨面の仕上がりが未熟で、このころの技術の低さを伺い知ることができます。16世紀の終わりごろ、ダイヤモンドは大きさでなく本来の魅力を引き出す「カット」が重要である、ということに人々が気づき始めました。
<17世紀>
17世紀頃は、「ローズカット」と呼ばれるカットが人気でした。クラウン側は三角のファセットが中心で、下面が平らなドーム型のように仕上げられています。まるでバラのつぼみのような形なので、ローズカットと呼ばれています。ローズカットは下面が平らなので、ほとんどの石に箔が貼られています。それによって、反射することで多くの光を発し、とても輝きの強いカットとなったのです。ダイヤモンドと組み合わせる貴金属は、金から銀へとだんだん移行していきました。ダイヤモンドをより輝かせるのは白色の光だということが解ってきたからです。
<18世紀>
17世紀に原型ができつつあった「ブリリアントカット」が、18世紀には主流になりました。当時のブリリアントカットはラウンド(丸)ではなく、「クッションシェイプ」といって、四角形の角が丸みを帯びたものがほとんどでした。現在の主流は「ラウンドブリリアントカット」ですが、当時それができなかった理由は、非常に手間がかかり、ダイヤモンドが目減りしてしまうと考えられていたことからです。そのため当時のダイヤモンドのカットは上部がとても厚く、原石の形を生かしたものでした。箔を貼ったりせず、オープンセットで光を取り込むカットになってきたのも、このころからです。
<19世紀>
19世紀に入ってからも、主流のカットは「クッションシェイプ」でした。原石の輪郭に合わせて、なるべく目減りしないようにカットされたものが多かったのです。現在も残る有名なダイヤモンド、ビクトリア女王即位60年祭にカットされた「ゴールデン・ジュビリー」は245.35カラット、英国王室の冠にセットされる「カリナン2」は317カラット、フランス王室の「リージェント」は140.5カラット、いずれもクッションシェイプのカットです。
<20世紀>
20世紀に入ると電気の普及に伴い、カットの技術が格段に上がりました。ダイヤモンドのカットに革新が起こり、ラウンドシェイプ(円形)のブリリアントカットが主流へと移りました。19世紀末にソーイング(原石を分断する工程)の技術が確立するまでは、一つの原石から一つのダイヤモンドが生まれていました。そのため、ラウンドシェイプでもテーブルがとても小さなものでした。ソーイング技術が確立してから、一個の原石から二個のダイヤモンドが作れるようになると、全く逆のテーブル面が大きいシェイプになりました。
<現在>
ベルギーのマーセル・トルコウスキーにより「アイディアルラウンドブリリアントカット」が考案されたことで、現代はラウンドブリリアントカットが主流になりました。宝石職人であり、数学者でもあるマーセルは、光学的特性に数学を取り込み、ダイヤモンドが最も輝く58面体のカットをあみ出したのです。そのことにより、ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドはジュエリーの枠を超え、芸術品の域に達したと言われました。ラウンドブリリアントカットの出現により、ダイヤモンドの評価の共通性を図るために「鑑定書」がつけられるようになりました。1990年代にはコンピューターとレーザーの技術が進み、生産性も向上し、さまざまな技術が格段に良くなりました。
鑑定書におけるカットの評価について
ダイヤモンドは、「カッター」という専門職の人が石のカットをします。カット次第で美しく輝かせることもできますし、内包物を目立たなくすることもできます。原石をより美しく見せることは、「カッター」の腕にかかっています。カッターには、石の可能性を見極める「目」が必要です。長い年月をかけダイヤモンドは今の形になり、鑑定士により鑑定され、その評価が世界に通用するものに確立しました。一般的なルールとして、カットの評価が高いものがより輝きを増します。ダイヤモンドのカットの評価とは、どういうものでしょうか?
カットの評価は5段階
天然のダイヤモンドを等級付けするのに「カット」だけが人の手によって施されたものを評価しています。カットは、研磨の仕上がり具合を評価するからです。グレードは、「正確なプロポーション」と「研磨の質」と「対称性」で決まります。左右対称で形の整っているものが良質とされます。ダイヤモンドのカットのグレードの等級は次の5つです。
- excellent エクセレント…最上級。光学的に理想。
- bery good ベリーグッド…とても良い。理想的。
- good グッド…良好。
- fairフェアー…やや劣る。
- poor プアー…劣る。
美しく見える三つの光学的効果
ダイヤモンドの美しさは「ファセット」と呼ばれる研磨面の大きさや角度などの絶妙なバランスが影響してきます。以下の三つのポイントが、カットの良し悪しを左右するのに、重要になります。
<ブリリアンシー・・・「白色光の輝き」>
ダイヤモンドに入った光が、幾重もの内部反射を経て中心に集まった光。目に見えるまばゆい光の輝きのことをいいます。
<ディスパージョン・・・「虹色の輝き」>
ダイヤモンドの中に入った光が、光のスペクトルに分解され虹色に輝いて見えるものをいいます。
<シンチレーション「光のきらめき」>
ダイヤモンドのカットの表面で反射する光。見る人の位置によって、閃光のようにキラッと光って見えます。
ラウンドシェイプだけじゃない、ダイヤモンドのカット
標準のラウンドブリリアントカット以外のカットを「ファンシーカット」「ファンシーシェイプ」と呼びます。ファンシーカットにも、その形状からそれぞれの呼び方があり、マーキス、ペアシェイプ、ハートシェイプ、プリンセス、エメラルド、オーバルなどがあります。美しいダイヤモンドほど、熟練したカッターはそのダイヤモンドが最も輝きを放つよう計画を立て、カッティングをします。