ダイヤモンドで資産運用。その実態は…?
今、ダイヤモンドが資産運用に利用できる、と注目されています。投資商品には株、FX、不動産などがありますが、富裕層が選んでいる投資のひとつが「ダイヤモンドの投資」なのだそうです。「どんなダイヤモンドが資産運用に利用できるのか」「メリット、デメリットは?」「注意点はどんなところ?」などということについて、まとめてみました。
代表的な資産運用、貴金属
国際経済の混迷や大災害時のリスクに備え、金やプラチナなどの貴金属を資産として持つ人が増えています。金やプラチナは1gあたり4,000円から4,500円程度で取引されています。これらの価値は日によって変動するものですが、お金と違って世界共通の価値を持っているため、国際情勢にかかわらず一定の価値が保証されています。特に金は、プラチナと比べても変動が少なく安定しているので、資産としてとても重宝されています。また金やプラチナなどの貴金属は、少量ずつ買い足していくことができるので、一定額を積み立てていくという方法をとることもできます。そうして分散して購入することで、短期的な価格変動のリスクを抑えることにも役立っています。
ダイヤモンドジュエリーは資産になる?
こうして貴金属は、古くから資産運用されてきましたが、ダイヤモンドをはじめとしたジュエリーは資産になるのでしょうか?ダイヤモンドは資産としての価値も近年認められ、注目されています。しかし、加工されたダイヤモンドジュエリーは、資産としての価値はそれほど高くありません。いちばん身近なダイヤモンドジュエリーとも言える、婚約指輪に値段をつけるとしたら、いくらぐらいになるのでしょうか。
大きさやグレードによってもまちまちですが、大富豪や皇族が持つ高級ダイヤモンドジュエリーを除いては、購入金額の1/10ほどになってしまいます。ジュエリーに加工されたダイヤモンドの価格は、大暴落してしまうのです。ジュエリーは、アンティークでよほど希少価値が高いものや、ある程度の大きさがあるもの以外は、資産価値がないと言っても過言ではありません。ダイヤモンドジュエリーは資産としてではなく、身に着けて楽しむものと考えた方が良さそうですね。
ダイヤモンドの資産運用にいち早く気づいたユダヤ系民族
ダイヤモンドジュエリーとしての資産価値はそれほど高くないものの、ダイヤモンド自体には資産としての価値が大いにあります。ダイヤモンドの資産価値に、いち早く気づいていたのはユダヤ系の人々です。第2次世界大戦のころ、自分の国を持たなかったユダヤ系の人々は、ヨーロッパの各国に居を構えていましたが、ナチスドイツからの迫害により、居住地からも迫害を受けていました。そんな潮流の世の中になると、「住んでいる国の通貨がいつ使えなくなるかわからない」というリスクを抱えることになります。ユダヤ系の人々は、住んでいる国の通貨を信用せず、財産をダイヤモンドに替え、身に着けて隠し持ち、非常事態はそれを持って国外に逃亡していました。ダイヤモンドは、世界のどの国でも換金することができ、それを元手にして新しい国で生活をすることができたのです。そんな歴史的背景が、ユダヤ人のダイヤモンドビジネスを生みました。
ダイヤモンドで資産管理をするメリットは?
保管性や携行性の高さが、ダイヤモンドで資産管理をする大きなメリットです。小さなダイヤモンドは、額が大きくなってもスペースを取らず、保管や管理で困ることが少ないと言えます。一方、金やプラチナは、換金性も高く人気がありますが、重量によって価格が変動するため高額になるほど重くかさばってしまいます。
仮に、1億円の価値がある金塊があるとしたら、その重さは50キロから100キロ(相場により変動します)にもなりますが、一粒1千万円のダイヤモンドなら10粒です。現金1億円も結構かさばり、重くなるものです。
安定したダイヤモンドの価格
金やプラチナなどの貴金属は、毎日細かく価格が変動しますが、ダイヤモンドは価格が変動することはそうありません。ダイヤモンドの価値は、情勢や時代などによって変動することが少ないので、金やプラチナなどの貴金属よりも価格が安定していると言えます。それに加え、ダイヤモンドは地球上で一番固い鉱物で傷が付きにくいため形状としても変化することがなく、価値を保ちやすいという点もメリットの大きな一つです。ダイヤモンド投資となると、正式な取引市場が形成されているので、婚約指輪のように買い叩かれることはありません。需要と供給の関係で取引量が決まります。
ダイヤモンドの換金性は?
ダイヤモンド売買店の数は非常に多く、現物を持ち込み、査定を依頼するとすぐに買取金額を割り出すことができます。しかし、買い叩かれる可能性もありますので、質屋などに持っていく換金の仕方はおすすめできません。ダイヤモンド単体としての換金性は、思うほど高くないのが実情です。宝石は前述のとおり、時代や情勢が変わっても価格の変動が少ないので、もしものために持っていれば、安定した危機管理資産として活用できるよう考えることができます。
どこに売却すればいいの?
現物のダイヤモンドを証券化し、ダイヤモンドを投資商品として販売している会社があります。こうしたダイヤモンドを取引商品として扱っている会社に売却するといいでしょう。世界的にもいろいろな取引市場があり購入や換金をすることができます。購入する時は、宝飾品として購入するのではなく、投資商品として証券化したものを購入した方が良さそうです。
ダイヤモンドの資産運用の注意点
資産運用できるダイヤモンドには、制限があります。資産運用で利用するダイヤモンドは、できるだけカラット数が大きく、鑑定の評価が高いものを選ぶ必要があります。1カラットに満たないほどの小さなダイヤモンドは、資産運用の世界では価値が付きにくいため、利用が難しくなっています。
ダイヤモンドでの資産運用が注目されている理由
次の4つの観点からも、ダイヤモンドや貴金属で資産運用することが注目されています。
・大災害のリスク
日本は東日本大震災と原発事故で、甚大な被害を受けました。日本人の基本的な資産である不動産は消滅し、多くの人々が家財道具も失くしてしまいました。また家屋に直接の被害はなくても、原発事故の状況でその土地に住むことができなくなった人も多くいます。
・国際経済、政治の混迷
ヨーロッパではギリシャをはじめ、スペイン、ポルトガルの財政悪化が深刻化し、特にギリシャは債務不履行の瀬戸際にあります。一方アジアでは中国経済が過熱し、インフレに苦しんでいます。国家財政が破綻すれば、通貨や国債は紙くず同然となってしまいます。
・金融機関の不振
1990年以降、たくさんの銀行が破綻してきました。ペイオフ(預金保護)のシステムが変わり、現行制度では金融機関が破たんした場合、利息が付かない預金(当座預金など)以外の普通預金は最高1000万円とその利息までもが保護の対象で、その額を超えると全額返金されるとは限りません。日本はデフレで苦しんでいますが、中国のようにインフレで苦しむ国もあります。インフレは通貨の価値を大きく下げ、同じ預金額でもその価値が下がります。中国では貴金属投資が活発化されていますが、その背景にインフレがあります。
・株式市場の低迷
株式市場は、リーマンショック以降低迷を続けていて、大変リスクの高い投資となっています。業績の安定した大企業の株式を資産として保有しても、自然災害が起きたり、いつ大問題が発生し株が大暴落するかは予想することもできません。
以上の理由から、ダイヤモンドや貴金属で資産運用することが注目されています。不安定な政治や経済、国際情勢、大災害や金融機関の不振などが、従来のような方法での資産管理が安心できる資産だと思うことができない状況を作り出している、ということがわかってきました。