ダイヤモンドジュエリーを購入する時には、鑑定書も一緒にもらっておくのが一般的です。それでは、この「鑑定書」とは何でしょう。普段よく耳にする「鑑別書」というものとは別なものなのでしょうか。それとも表現が違うだけなのでしょうか。似ているようで違うような、鑑定書と鑑別書。もっと詳しく知ってみたいですよね。今回は、ダイヤモンドの鑑定書と鑑別書の違いについて詳しくお伝えしていきます。
鑑別書は、宝石鑑別士が検査したものです
まず、鑑定書と鑑別書は、全く別の証明書です。「定」と「別」の字が違うだけで、とても似ている言葉だけに勘違いすることやどちらなのかと混乱してしまう事もあるかも知れません。
鑑別書は、この世に多く存在する宝石全てを正しく判別した結果を報告しています。例えば、ルビーらしき赤い石があるので、ルビーである事を証明してもらいたい、出来れば原産国も知りたい、などと行った場合があるとします。鑑別機関に持ち込まれた石は、鑑別士がいくつかの検査を慎重に行い、最終結果を報告します。テストの結果、赤い石は珍しいブルマ産のルビーで、大変高額なものと報告されるかも知れません。逆に、実はルビーではなくスピネルだったり、ガラスだったりなどといった報告になることもあり得ます。鑑別書では、肉眼だけでは知り得なかった事実がはっきりレポートされるのです。
鑑別書は、大きく分けて3つの項目に分けた結果が記載されています。
まず最初に、鑑別結果として鉱物名と宝石名、写真がわかりやすく記載されています。コメント欄には、宝石について簡単な意見が書かれます。鑑別検査では、宝石の屈折率、多色性、比重、分光性、偏光性、蛍光性などを専門機器を使って鑑別士がテストを行います。宝石にはそれぞれ違った特徴があるので、これらのテストをするだけで、その石の性質が解り、宝石の特定が出来るのです。テスト結果の他には、宝石の外観が書かれた項目があります。こちらには重量・刻印、寸法、透明度と色、カットが記載されます。
さて、問題のダイヤモンドについてです。
ダイヤモンドを鑑別してもらう事はもちろん可能です。例えば無色の石があって、ジルコンか合成かわからない場合などに鑑別してもらえます。鑑別書ももちろん発行されます。ただし、鑑別書では、その石がダイヤモンドであるか否かという結果が出た、という証明だけです。合成などであった場合はここで終わりですが、ダイヤモンドであると証明された場合は、そのダイヤモンドが他のものに比べてどれ位のグレードで、どれほどの価値があるのかという事を証明することが最も必要とされるのです。
では、そのグレードを証明するには、どうしたらよいのでしょう。
そのテストを行うのが、鑑定機関なのです。
鑑定書はダイヤモンドを細かく検査したものです
簡単に言ってしまうと、鑑定書とはダイヤモンドの輝きやカットなどをより深く検査し、そのテスト結果を報告するものです。つまり、ダイヤモンドのみに発行される証明書です。ルビーやサファイアなど色のついた宝石は数知れずありますが、それらの宝石についてくるのは鑑別書のみで、鑑定書が発行されることはありません。ルビーなどが属するコランダムはモース硬度9で、ダイヤモンドは10です。硬度が数字ではほんのひとつ違うだけですが、実際の硬さの差には程遠いものがあるのです。ダイヤモンドは他の宝石からとはかけ離れた違いがあり、地球上で最も硬い物質なのです。この様に世界でも特別の存在であるダイヤモンドを評価したものが、鑑定書です。
鑑定書には、ダイヤモンドを評価する基準の4Cについてグレーディングが行われた結果が書かれています。4Cとは、カット、カラット、クラリティ(透明度)、カラーの四つの頭文字から取られたものです。
4Cは米国宝石学会であるGIAが国際基準として定めました。
カット
ラウンドブリリアントカットをあらゆる方向から分析し、評価します。ガードルの長さなどを%で表示しています。プロポーションが良いとファイア、ブリリアンス、シンチレーションの美しさが最大に引き出され、美しい輝きを放ちます。カットグレードはExcellent,Very Good, Good, Fair,Poorで評価されます。カットの評価が高いと、内包物や色などの欠点をカバーすることができるので、カットグレードは重要視します。
カラット
ダイヤモンドの見た目の大きさではなく、重量のことです。1カラットの重さは0.2gで、大きくなる程希少価値が高くなります。
クラリティ
透明度を評価する項目です。ダイヤモンドの内部と外部にある傷や内包物(インクルージョン)を見つけます。内包物などのまったくない最高ランクはフローレスのFLとILです。その後、内包物がほとんど無いVVS1,VVS2、微小の内包物があるVS1,VS2、内包物がわずかに発見されるSI1,SI2、内包物が肉眼でも見えるI1,I2,I3とランク付けされます。クラリティの評価は内包物などの大きさや位置によって決まります。内包物はそれぞれが特徴的なものであるため、形によって石にトリートメントが施されているか、合成であるかなどを見極める事もできます。
カラー
色の美しさを評価します。
ダイヤモンドは一般的に無色ですが、ほとんどのものがうっすらと黄色味や茶色味を帯びています。無色透明のものが最高ランクのDを示し、その後Zまでのランクがあります。Zに近くなるほど、黄色味が濃くなります。部屋の内装の色や光の入り具合、照明などで色の見え方が微妙に変わるので、鑑定機関でカラーグレーディングを行う時は、光の調整が厳密にされた部屋で行われなくてはなりません。
ダイヤモンドを評価するのは「鑑定書」です
ここまでのお話しで、「鑑別書」は宝石が本物であると言う証拠を証明するもので、「鑑定書」はダイヤモンドを評価するものであるという事がわかりました。
鑑別書があれば、お持ちの宝石がダイヤモンドであると証明できます。しかし、将来買取ってもらいたい、保険の証明にしたい、贈り物にしたい、とお考えなら、やはり鑑定書を発行してもらうことが大切になってきます。鑑定書にはダイヤモンドの4Cやプロポーションについてのテスト結果が詳しく書かれているので、どれくらいの価値があるかなどをある程度知ることができます。プレゼントとして贈る際にも、品質を証明するものがあると喜んでもらえます。
そして何より、ダイヤモンドをテストした結果の全てが書かれており、世界にひとつしかないダイヤモンドのプロフィールとなるものなので、お持ちのダイヤモンドジュエリーへの愛着も一層高くなりそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「鑑別書」と「鑑定書」は、全く違う証明書だったのですね。検査の方法も違っていて、テストを行う人は鑑別士と鑑定士それぞれ別々の知識を持ち、資格を持っている専門家です。
ダイヤモンドを購入する時に持っていたいのは、何と言っても鑑定書です。ほとんどのダイヤモンドには、鑑定書で評価されたグレードが表示されて販売されているので、ショッピングする時の目安になります。せっかく鑑定書を手に入れるのなら、読み方についても簡単に学んでおきましょう。ちょっとした知識を身につけておくと、ご自分のダイヤモンドジュエリーを深く知ることができる上、ダイヤモンドをとても身近に感じることができます。